◇作庭及び管理の意図やコンセプト
・伽藍内の庭園1 「須弥山の庭」
仏教の世界観にある宇宙の中心にあるとされる「須弥山」とそれを取り囲む九つの山と八つの海の「九山八海」をモチーフとした石組みの庭園。
中央に須弥山に見立てた巨石を立て、その立石を包むように九山八海を象徴する石を配石し、この世界全体を表現した。また須弥山は日月が巡る処とされていることから、創作灯りにて日月を造り、立石の左右に配することで日々の時間を表現した。背後にある臥龍垣は日常を表す行住坐臥という仏教の言葉から、垣根の躍動ある動きで日常生活の立ち振る舞いを表現している。
世の中と、過ぎ行く時と、人間生活の日常を表現としたこの庭園を眺めることにより、生き方を見つめなおし仏の姿に近づける修行ができるよう思いを込めて作庭した。
◇作庭及び管理の意図やコンセプト
・伽藍内の庭園2 「瑞泡の庭」
仏教において、めでたい兆しとして出現する紫色や五色の珍しい雲を瑞雲という。
円形に並べたピンコロを泡に見立て、雲に変えて現れた泡がめでたい兆しとなるよう表現した。ピンコロは泡のような柔らかさを表現するために角や表面をビシャン仕上げとし、色をランダムに用いた。また石組を鶴島亀島とし、幸福や長寿を願う庭園として作庭した。
・池泉庭園
境内中庭は背後の林を借景とした植栽と湧水による池の庭園となっている。
改築など他工事の影響があり、護岸の石組みを修繕した。
・石積み
池泉庭園からの水路の護岸石組み、および駐車場拡幅による壁としての石積みを現地発生の石材を用いて施工した。その後かつてない台風災害に見舞われた時に境内で洪水や道路崩壊が起きる中、これら石積み部は全く崩壊することなく、改めて真摯なものづくりが出来ている事を実感した。
・竹垣
私的な場所との視線の遮りに配慮し、また同じ垣根ばかりではなく面白みや味わいが出るよう考慮して竹穂垣及び
建仁寺垣、網代垣をそれぞれに施工した。
・育成管理
常緑樹を夏季に、落葉樹を冬期にと、樹種に応じて剪定する時期を分けた。また境内は広範囲であり全てを剪定するには費用が掛かりすぎるため、剪定する範囲を分けそれぞれを隔年で行うこととし、負担軽減に配慮している。
雑木は自然樹形を維持し透かし剪定を心掛けている。たとえば池泉庭園においてはいかにも剪定しましたという仕上がりでは背後の林との一体感がなくなってしまう。かといって放置した樹形では園内が何も見えなくなってしまうため、枝葉の密度や切り落とす枝の選別を、景全体を眺めながら、個では無く景としての剪定に配慮している。
◇今後の課題
今回のような宗教施設においての作庭では、その宗教さらにはその宗派についての知識を深めてなければ、間違った提案や見当違いをすることとなり、勉強の足りなさを改めて痛感した。自分の作りたい気持ちだけではなく、対象となる相手の事をよく知らなければ、より良いものづくりができない。更なる知識向上が必要である。また目先の新しさや流行だけではなく、古き歴史や時代背景など先人たちから学ぶべきことが沢山あるということもこの現場を通じて身に染みることとなった。